「渡辺俊経家文書」発見の経緯
帰って来た甲賀者が将に江戸から帰郷した年、平成12年(2000)の帰郷数か月後に、屋敷内に残る古い土蔵の2階にある古ダンスの引出から自ら発見した。この蔵は年月日不詳(文政~天保頃か)の落雷により母屋ほかがほぼ全焼した中で唯一焼失を免れたもので、お陰でその中に保管されていたこれら文書類が今日まで奇跡的に残存することが出来た。本文書群の特色は「忍び」を生業とする家に残っていたことがなるほどと納得できる程「忍者関連文書」の集まりであるという点である。この点で当文書の存在そのものが当家が尾張藩に仕える甲賀者の子孫であることを裏付けていることになる。
「渡辺俊経家文書」の概要と特色
総数 157件
期間 万治2年(1659)から大正3年(1914)に亘るが、大半が江戸時代の文書である。
内訳 尾張藩甲賀者関係:15件 甲賀古士関係:5件
忍術関係:17件 その他武術関係:31件
兵法書:14件
家系関係:16件 信仰関係その他:29件
地域関係、証文類:27件 その他:3件
合計157件
特色 上記から分るようにせいぜい庄屋を務めた程度の田舎の庶民の家から見つかった古文書にも拘わらず、尾張藩関係や甲賀古士などの武士に繋がる文書と忍術・その他武術・更には兵法書といった広い意味での武術関連専門書が典籍でなくコピーながらもオリジナル版の形で残っていて、これらが全体の半数以上を占めていることがこの古文書群の特色である。
「渡辺俊経家文書」の保存の現状
現在No.89「嵯峨源氏渡辺家系図」以外の156件を甲賀市に寄託してある。系図については実物を今後とも当家で使用続けるので、コピーを作成しこれを寄託中の他156件と合わせて保管して戴いている。
なお、行事での展示や外部からの貸し出し要請に対応するため、そういった要望の多い古文書類については各々2,3件のレプリカの作成とレプリカによる貸し出しを、本件寄託の際の約束条項として甲賀市との間で了解し合っている。
「渡辺俊経家文書」の解読と公開状況
極めて私的な証文類とその背景を探る等は行われていないが、それ以外の武術関係約80件と宗教関係その他約40件の文書については伊藤誠之氏により全て翻刻が行われており、
157件の文書群全体としての一次的な把握は終了することが出来ている。
翻刻された結果の大半は以下の2冊の書籍として公開されている。今後はこの翻刻されたそれぞれの文書が忍者研究の中でどんな意味を有するのかを究明する段階であろう。
『渡辺俊経家文書』―尾張藩甲賀者関係史料Ⅰ―平成29年3月 甲賀市刊行
渡辺俊経家文書全157件の約半数の翻刻
甲賀市観光協会窓口で購入可能
『甲賀者忍術伝書』―尾張藩甲賀者関係史料Ⅱ―平成30年3月 甲賀市刊行
渡辺俊経家文書より11件の現代語訳と木村奥之助関係忍術文書の翻刻
甲賀市観光協会窓口で購入可能