『忍者学大全』を前にして思うこと

  2023年2月22日付けで東京大学出版会から『忍者学大全』が出版されました。私にも届けてくださる方がおられて、お陰様で早々に拝見する機会を得られました。40人になんなんとする執筆者と500頁を越える内容はそれなりに迫力があり納得させられる項目も少なからずあります。85才にもなるとこれだけ分厚い本を熟読するパワーがなくなり、斜め読み・つまみ読みしか出来ませんが少々感じる所がありましたので所感をメモしておきたいと思います。

  先ず題名にある大全とは、ある分野に関するすべてを漏れなく書き尽くし論じつくすことだそうですが、ザット目次を見ただけでも甲賀忍者やその研究者に関する論及が足りていませんし、スパイと忍者の違いや殺人者と忍者の違いについて明確に論じた個所が見当たりません。逆に、どうやら古文書さえ見つかればそしてそこに隠密行動や他を欺く行為や戦場での特殊作戦への関与が記されていればそれは全て忍者がいたことにするという、それこそ何でもかんでも忍者であるという「大全」の発想が貫かれたのではないかと思ってしまいました。

  そもそも古来忍者らしい忍者は甲賀と伊賀にいたとされ、それを表す言葉としてリアル甲賀忍者やリアル伊賀忍者と呼ばれつつあります。ところが本書ではそのことについての論評も避けて通っていて、云わばろくでもない忍者の集結を後押ししているように見受けられます。こんなことではとても忍者学を論じ尽すことにはなっていません。それどころか大全を標榜するのはまだ百年早いというべきです。

  

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