今年のゴールデンウイークも終りになったが、期間中に次男と甲賀流リアル忍者館を訪ね、我が家の文書や屋敷跡がどんな風に展示されているかを案内して廻った。実は今まで何十回と見て回っていたのに、展示の基本方針などにはアンタッチャブルで通して来た。これは行政の担当部署に希望を云って任せた以上横から兎や角と口をはさむべきでないと考えたからではある。リアル忍者の歴史資料館という要素と地域の貴重な観光資源である「楽しい忍者」を売り込むゲートウエーとしての集客要素のバランスが必要だからである。そして我が家の文書の本物やレプリカもバージョン1の展示が行われ、リアル忍者館がコロナウイルス蔓延中にスタートした。
その後有力な地域起こし協力隊員の活躍で一般展示ゾーンも資料室の部分もブラッシュアップされ、現在はバージョン2の展示となっている。その結果をつぶさに見せてもらった訳であるが、一般受けをする理解しやすい形にはなったが、少しリアル忍者から遠のいたのではないかと感じる所があった。その時は何が違ったのかをよく理解できなかったが、家に帰ってなんとなく思いついたのが次の点である。
戦国時代以前の古い時代のリアル甲賀忍者を表象する展示としては2階での映像による六角氏(佐々木氏)、織田氏、徳川氏への時代を追った甲賀者の献身と、一階での長享の乱、鵜殿退治、神君甲賀伊賀越、伏見城・関ヶ原、島原の乱での甲賀者の活躍咄であるがこちらは古文書をよく読まぬと見学者の印象に残りにくいやや地味な展示止まりとなっている。他方、江戸時代以降の甲賀忍者については2階の調査隊の展示室で古文書による展示が行われていたが、今回ここに忍術書に関する解説が加わり且忍具が展示されることとなった。
忍具の中には実際には存在しなかったもの、つまり後世捏造されたと考えるべきものも含まれており観光客を喜ばせるためにあえてリアル度を下げてしまったと感じたのではなかろうか。また忍術書は江戸時代になって70年以上経ってからの新しいものがほとんどで内容的にも実働的なものが少なく最も信用できるとされる万川集海でさえ机上の空論とも思えるものも少なくない。甲賀者は忍術書に書かれたような忍術を用いて六角氏や織田氏や徳川氏に貢献したのではなくもっと根源的な部分で信頼にこたえた貢献をしたものと理解すべきであろう。従って忍術書を詳しく解説すればするほど甲賀者は胡散臭い存在となり、甲賀忍者のリアル度が下がることに注意すべきではなかろうか。
この中で木村奥之助の忍術書を見直し、彼が尾張藩で求めれれた役割と忍術書の中で語る甲賀流忍術がどのように整合されようとしていたのかを研究することが求められる。